いわき市内のナガエツルノゲイトウについて
ナガエツルノゲイトウとは、南米原産のヒユ科の多年草で、生態系や農業に悪影響を及ぼす恐れがあるとして「外来生物法」で特定外来生物に指定されている植物です。日本では、平成元年に兵庫県尼崎市で定着が確認されたのち、令和5年までの35年間で関東地方から南西諸島まで広がっています。いわき市では、昨年(令和6年)6月に水田で確認され、福島県病害虫防除所から農家向けの報告書が発表されています。
9月26日(木)に当NPOメンバーが、いわき農林事務所協力のもと昨年いわき市内で確認された地域で、今年の生息状況の確認をしました。その結果、昨年確認された場所で生息拡大している様子が見られました。ナガエツルノゲイトウの存在は、農業者には知られてきたものの一般にはあまり知られていないため、今回の結果を広報し、いわき市の皆様にナガエツルノゲイトウ拡大の危険性を理解していただきたいと思います。
1 ナガエツルノゲイトウの生態
開花期は4~10月で、葉の付け根から花柄を伸ばし、その先に球状の白い花を付けます。国内の系統は種子を付けず、横に伸ばした茎や根で増えます。茎の再生力が強く、数cmの断片から根が出て増殖することができます。茎がちぎれやすく、水に浮くため、その断片が水によって運ばれ拡散しやすい性質もあります。冬、地上部は枯れて根だけが残ります。根は、土中で50cm以上伸び、根の断片からも再生します。水陸両方で生育できるため、乾燥にも耐えることができます。繁殖力の強さと他の植物との競合により、農作物の収穫量減少、水路の取水・排水障害などの被害が報告されています。
2 生息状況
いわき市内では、川部町、瀬戸町の2か所の水田に生息しています。川部町では、水田の畔全体に広がり、排水溝などの水が多い所では、茎が太く、長く伸びて大型化していました。四時川左岸の水田(赤坂地区、宮前地区)全体で生息が確認できました。川部町は、四時川・鮫川流域のため、川に流れた断片から増えたのか、鮫川下流の江栗橋、鮫川橋の岸でも生育しています。今年は、沼部橋、JR高架橋下の他、河口右岸側に一株、左岸側に十株程度が確認できました。瀬戸町は、蛭田川流域で、川部町と流域が異なるため、どのような経緯で広がっているのか不明です。蛭田川の排水路と周辺の水田の畔の西側から東側に向かって広がっていました(水口から水尻への水の流れの関係か?)。昨年生息確認された瀬戸町の別の地域は、基盤整備工事のため消滅していました。
今回は、花がついている個体も多かったが、国内のナガエツルノゲイトウは種を付けないので、種による生息拡大の心配はありません。しかし、河口でも生息していることから、海水に耐性を持つと思われます。水陸両性ですが、乾燥よりは湿っている環境を好むのか、湿っている場所で大型化していました。乾燥した場所では、虫の食害を受けている個体もみられました。激しい流れには根が張れないためか、四時川本川には生育していませんでした。
3 生育防止対策
特定外来生物は、栽培、保管、運搬、野外への放出・栽培等が禁止されているため、簡単に除草することはできません。現在は、個々の農家の協力でナガエツルノゲイトウが生息している畔は刈り払いをせず、除草剤を使って侵入、拡散の防止に努めています。水田の中に侵入した個体は確認できなかったので、除草剤で防除できているようです。
4 今後について
今回、昨年生息が確認された地域の確認をしましたが、ナガエツルノゲイトウが畔の多くを覆っている状況に驚きました。川部町では、現在、農家の皆さんの協力で、除草剤で防除していますが、少しでも断片が残っていると、そこからまた来年新しい個体が増殖する可能性が残っています。耐塩性があるとすると川から海に流れ出た個体が、いわき市内の海岸に定着し、増殖する可能性も考えられます。瀬戸町では、1か所だけの確認でしたが、蛭田川は川幅が狭く、流れが穏やかで、富栄養化のため、川に流出した場合、爆発的に増殖する可能性も考えられます。今回基盤整備工事で消滅していましたが、その場所に生息していた個体の断片が、土壌と共に運ばれた先で増殖する可能性も残っています。
このように急速な拡大状況を踏まえ、農家だけではなく多くの地域住民にナガエツルノゲイトウを知ってもらうことが拡大防止の第一歩です。行政、研究・教育機関等には、拡大を軽減するための緊急対策を検討して欲しいと思います。
当会のような環境NPOができることとして、行政機関と連携を図りながら、調査の様子を地域住民に情報発信することや、外来生物法に抵触しない小規模な防除活動等が挙げられます。一人ひとりの力は微力でも、皆が協力することで、地域の環境を守ることができると信じて活動していきたいと思います。
(投稿:M.Yさん)


